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1.1.3 リソスフェアとアセノスフェア

                              
 地殻、マントル内では、地震波が伝播する速さは深さとともに増大する。ところが、マントル最上部の深さ200kmあたりまでは、逆に深さとともに地震波の速さが減少する傾向を示す。その結果、地表からの深さおよそ100〜200kmの部分は、地震波の速さが異常に小さい「低速度層」となっている。低速度層では、岩石の剛性率が低く流動しやすい状態にあると考えられる。場所によっては、岩石が部分的に溶融しているかもしれない。

 このような知見に基づいて、地殻とマントル最上部を次のように区分けする。地表から深さおよそ100kmまではしっかりした固体で、これをリソスフェア(岩石圏)と呼ぶ。その下に続く低速度層は、基本的には固体であるが流動しやすい層で、これをアセノスフェア(岩流圏)と呼ぶ。この区分けは、岩石の種類は無視して、岩石の固さ(剛性)、流動性といった力学的な性質に着目したものである。

 固体である岩が流動するというのは、あるいは常識に反するかもしれない。ここで、地球が赤道側に300分の1ほど張り出した形をしていることを思い出そう。これは、地球が自転して遠心力が働いているためである。この張り出しの大きさ(扁平率)から計算すると、マントルは固さがほぼゼロの液体という意外な結果になる。

 実は、岩石に限らず全ての固体は、弾性的な性質とともに流動する性質を兼ね備えている。そして、長い期間にわたって作用する力に対しては流動性が優勢になってくる。マントルの中で対流が起きているという考えも、同様の根拠に基づくものである。こうした時間スケールに依存する物性は、「レオロジー」(流れ学)と呼ばれる学問で取り扱われ、高分子化学などの分野で古くから研究されてきた。


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