前ページ次ページ

5.3震源断層の破壊過程



5.3.1 地震波のディレクティビティ

                           
 断層破壊が高速で伝播するために、地震波の振幅が方位によって異なってくる。これを「ディレクティビティ効果」と呼ぶ。

 震源断層からある周波数の波が放射されると、破壊の進行方向では振幅が大きくなり、また周波数が高くなる。破壊が遠ざかる側では、逆に小振幅、低周波となる。これは、ドップラー効果として知られているものと全く同じ現象である。サイレンを鳴らした自動車が通過するとき、接近時には音が高く、通りすぎると音が低くなることを思い起こせばよい。

 震源断層から放射されるP波、S波のパルスは、様々な周波数の波から構成されている。各周波数成分の波がドップラー効果で変調され、結局、放射されたパルスは破壊の進行方向では鋭く、反対側では鈍くなる。このディレクティビティ効果は、震源断層付近の地震動に無視できない影響を与える。

 1995年兵庫県南部地震の際には、震源断層の北東延長方向に当たる西宮市、宝塚市でも甚大な被害が発生した。この地震の断層破壊は、明石海峡の直下で始まり北東の神戸側と南西の淡路島側に伝播した。西宮や宝塚は、ディレクティビティの影響を最も受けやすい方向に位置していたことになる。

 ディレクティビティ効果は、震源域から遠ざかるにつれて小さくなる。これまでの観測結果から見ると、この効果が顕著に現れるのは、震源断層の長さの2倍程度の範囲内に限られている。


前ページ次ページ