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5.3.3 スロー地震と津波地震

                         
 震源断層から放射される地震波の振幅は、地震モーメントではなく、その時間微分であるに比例する。面積、すべり量の小さな断層を考えると、(5-3)式から、
(5-11)  
となる。従って、が同じ地震でも、すべり速度が大きい(立ちあがり時間が短い)ほど、また、破壊伝播速度が大きいほど大振幅の地震波が放射されることになる。

 逆にが小さいと、地震波があまり励起されず、普通の地震計では記録されにくくなる。このような特殊な地震を「スロー地震」と呼ぶ。大きなスロー地震が海底で発生すると、地震波のエネルギーと比べて不釣合いに大きな津波を引き起こす「津波地震」となりやすい。津波は海底の上下変動に起因するので、たとえ破壊の進行がゆるやかでも、大きな地殻変動が伴えば大きな津波が生じる。

 1896年の明治三陸沖地震(Mw=8.0)は、世界有数の巨大な津波地震であった。地震波の振幅から決めたマグニチュードは=6.8に過ぎなかったが、最大38mにも達する大津波が沿岸各地を襲い、津波による死者が約2万2千人にのぼった。

 断層のすべり速度、破壊伝播速度がさらに小さくなると、地殻変動の進行が遅く津波すら起きなくなる。このように著しく緩慢な断層破壊現象は、時として地殻変動の観測で捕らえられる。これが「サイレント地震」である。


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